のり弁の話

何故かのり弁が好きだ。普段は特に何とも思わないが、空腹感を抱えていざ弁当屋やコンビニで弁当を選ぶという段になると突如のり弁が思いのほか存在感を放ちだす。具材の原価のせいか、比較的安価にそこそこ腹が膨れるといういかにも安っぽい感じが良い。

 

親元を離れて暮らすことで自炊はそこそこするようになったが、試験が近づくとそういう安っぽさに縋ることが増える(自炊に割く時間が惜しいというよりも単に面倒くさいだけ)。そういうわけで昨日の夕食も弁当屋に向かい、結局のり弁になった。

 

わせだの弁当屋(東京都新宿区早稲田鶴巻町):

のり弁(280円)

f:id:fujifavoric:20140110200827j:plain

 

おかか白飯にかぶせられた海苔・ちくわ天・白身魚のフライ・きんぴらごぼう・お新香(しば漬け)・大手弁当屋チェーンに対抗し得る低価格など、シンプルにのり弁としての要件を満たしている。きんぴらごぼうは店によってあったりなかったりするが、この手の弁当にとっては大変貴重な食物繊維源なので大切にしたい。

このようにシンプルなのり弁ではあるが、各種フライに何をかけるべきかという問題が一つの大きなテーマとして存在する。醤油・ウスターソース・タルタルソースなど様々な派閥が乱立しているが、ここはシンプルに古風な醤油一本で勝負しているところが潔い(?)。

 

ひとしきり醤油をふりかけてとりあえずちくわ天に噛みつく。個人的にのり弁の主役は白身魚のフライなので、いきなり主役にがっつくのは少々気後れする。こうして自分で文章にしておいて言うのもなんだが、手をつける料理の順番にさほどの意味はないしそもそも大して何も考えていないことの方が多い。むしろのり弁は何も考えずに胃に詰め込むくらいがちょうどいい。ジャンクだから。

ちくわ天の衣は固いんだか軟らかいんだかよく分からん食感で、衣ごとちくわをキシキシ咀嚼していると「ああ、これ一体いつ頃揚げたんだろうな…」という妙に感慨深い心持ちになる。

きんぴらごぼうはほぼ唯一の食物繊維要員なので若干の期待はあるが、まあ業務用パックだろうし、実際ごぼう特有のシャキシャキ感は皆無。仕方ないね。ご飯は進む。

白身魚のフライにかぶりつくと威勢のよいシャクッという音がして心地良いが、そもそもこれ何の魚だ。衣は厚めなうえに中身も白いのでどこからが魚の身なのかよく分からない。分かろうとしたこともない。ただ真っ白い断面から魚のにおいが漂ってくる。味だけでなく出自も含めて非常にジャンキーな一品だがこのジャンキー感こそがこの店の弁当の醍醐味でもある。

ここの海苔は固く、うまく箸で裂くことができないのでいつも途中で諦めて残りの海苔全部で白飯を包んで食べてしまう。こうなるともはやただの揚げ物弁当だ。

いわゆる三角食べをしつつ、最後にしば漬けを頬張る。こういうジャンキーな弁当にとって、口内の油っぽさを軽減するお新香は大変重要な役割を果たす。

 

ここ「わせだの弁当屋」は文字通り早稲田大学のごく近くに店を構え、腹を空かせた早大生たちに対し量も油もたっぷりな弁当で応え(またの名を「油田」というらしい)、夜は夜でタクシー運転手たちの集う弁当屋になる。

 

そのような土地柄のせいか、この店ではありとあらゆる弁当にデフォルトで唐揚げをぶっ込んでボリュームを増そうとしてくる。こののり弁はその例外にあたるが、希望すれば+70円で「のりカラ」(のり弁+唐揚げ)をオーダーでき、また+50円でのり弁からお新香・きんぴらを抜いて唐揚げをぶち込む「前抜き」をオーダーできる。そのためここでは唐揚げ付きのメニューを購入する学生が多く、のり弁単体での注文は他店に比べ少ないのではと思われる。

また、のりカラや前抜きは更に+50円で申し訳程度の明太子を付けることが可能だが、おそらくは業務用のチューブからちょろっと出しただけであろう明太子に50円を支払うなどという豪遊は、まだ些かハードルが高い。

 

f:id:fujifavoric:20140110200903j:plain

早い・安い・そこそこうまい、でいいじゃない、のり弁だもの

 

のり弁しゃけ弁

のり弁しゃけ弁

 

 余談だがしゃけ弁にはあまり惹かれない。あれは弁当としてあまりにも健全すぎる。